法然上人800年大御忌


  浄土宗の教祖、「法然」は、1133年4月7日、美作の国(岡山県久米郡誕生寺)に豪族の家にお生まれになりました。幼名を勢至丸と名付けられ、両親、一族の深い寵愛を受け健やかに成長されました。
 しかし、9歳の時に父が夜襲にあい、非業の死を遂げてしまうことになりました。父は、臨終間際に少年の法然上人に遺言を言われました。「決して仇を討ってはならない。仇は仇を生み、憎しみは絶えることがなくなってしまう。それならどうか、すべての人が救われる道を探し、悩んでいる多くの人を救ってほしい。」と残しました。

  法然上人は、父死後9歳で、母方の叔父のお寺である「菩提寺」に預けられ仏教に手ほどきを受け6年後には、比叡山に昇り正式な出家の身となり天台宗の勉学にいそしんだ。
 しかし、当時の比叡山は名誉や派閥争い等、俗世間的な争いも多かった。又出家のための仏教であって一般民衆は置き去りにされていた。勢至丸は比叡山の中でも高僧が集い、より修行、修学に励むことが最適な黒谷に隠遁する決意を固めた。

  法然上人の正式な名前は、「法然房源空」。黒谷青竜寺では、比叡山の厳しい修行を勤めると同時に、一切経と向い合って学問にも励んでいった。上人の比叡山での修学は28年間もの長きにわたる。その間、常人では一生かかっても読破できないような膨大な量の一切経を5度も読み返したのであった。そのため「智慧第一の法然房」「ふかひろの法然房」と名声ばかりが広がっていったが、求める教えは見つからず上人の苦悩が晴れることは決してなかった。
  善導大師に導かれて・・・法然上人は「観経疏」という唐の善導大師がお書きになった書物を8度も読み返していた。それには「南無阿弥陀仏と念仏を称えれば、全ての人が漏れなく救われる。なぜなら阿弥陀如来の誓い(本願)だからである」という一文をご覧になった。阿弥陀如来の誓い=本願念仏によってのみ全ての人が救われる。善導大師のご文に導かれ、ようやく長年の苦悩が晴れ「これですべての人々が救われる」という確信を得た。
 こうしてついに承安5年(1175年)43歳の春、法然上人は浄土宗をお開きになったのである。
(浄土宗のお寺と仏壇には必ず向って右側に善導大師をおまつりします)


  法然上人が75歳の時、無実の罪で四国へ流されることになり弟子達は高齢の上人を心配して念仏を止めてはどうかと勧める者もいたが、「たとえ死刑にされるとしても念仏の教えを説くことは決して止めない!」と断固とした厳しい態度で戒めた。そして「長年、地方に行って念仏の教えを説くことが願いだった。今回それが果たせるのも朝廷のお陰である。念仏の教えは止めようと思っても広がっていくだろう」とお話になった。そうして四国へと向い、行く先々で多くの人々に念仏の教えを説いて聞かせたのである。
 罪が許され約5年ぶりに京都に戻った。吉水の禅房は荒廃していたため大谷の禅房(現在の総本山知恩院)にお住まいになったが、高齢と所労が重なりほとんど病床につくようになった。
 亡くなる2日前、横になり念仏しながら過ごす上人に、弟子の一人がどうか形見に一筆書いて下さいと懇願をした。そして念仏の要諦、浄土宗の肝要を『一枚起請文』としてお誓いになられ、書き残してくださったのである。
(「一枚起請文」は現在の浄土宗においてもお勤めの中で拝読しお経と同様にお読みしている)
 建暦2年(1212)正月25日の正午、頭北面西のまま「光明遍照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨」の経文を称え、眠るがごとくに極楽浄土へ往生された。80歳のご生涯であった。


 法然上人が亡くなられて今年が800年という節目の年になり、各地で追悼する行事が行われます。京都にある総本山智恩院の大遠忌法要は平成23年3月27日から4月25日までの30日間行われます。「またとない勝縁にお出合いしましょう」とご参詣をPRされています。
 法然上人は、お念仏を称えれば、誰でも極楽往生できるという教えを法然上人が広められたおかげで、初めて、仏教は万民のものになったのです。ぜひご縁をいただきましょう。

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