第8番 長谷寺


  長谷寺を開いた徳道上人は、8世紀に創められた西国三十三所霊場めぐりの創設者と伝えられています。今では、日本で最も古い巡礼として参拝者が多い事で知られています。

  真言宗豊山派の総本山である長谷寺は、万葉集で「こもりくの泊瀬(はつせ)山」と詠われところです。第107代後陽成天皇の御辰筆による額が掛かっている国の重要文化財の仁王門が立派で、最初は、平安時代の第66代一条天皇の頃に建てられ、その後9回も火災にあっています。現在の仁王門は、明治18年に再建され、楼上に十六羅漢を安置し、左右の両脇に金剛力士が立ち参拝者を迎えます。

  仁王門を入ると、丸い長谷寺型灯籠を梁に吊す399段の回廊形式登廊が本堂へと続きます。

  「登廊」も国の重要文化財となっていますが、最初は、1039年(長暦3年)に春日大社の社司中臣信清が我が子の病気平癒の御礼で寄進し、上中下の三廊になっていて、現在の下廊と中廊は、明治22年に再建されたものです。

  雨の日にはありがたい「登廊」は、僧侶のお勤めにも使われています。

  国宝になって10年の「本堂」は、1650年(慶安3年)に徳川第3代将軍家光によって寄進、再建されていますが、奈良は東大寺の大仏殿に次ぐ最大級の木造建造物で、間口柱間9間、奥行5間の正堂、9間・4間の礼堂の南に更に5間・3間の外舞台がある壮大なの建物です。

  本尊「十一面観世音菩薩」は、1538年(天文7年)仏師東大寺仏生院実清良覚によって彫られた長谷寺型観音で、金色に輝き、右手に錫杖と念珠、左手に蓮華を挿した水瓶を持って方形の石の上に立ち、我が国最大の木造仏(楠の霊木)で、身の丈は3丈3尺6寸(約10m)、光背が4丈4尺(約12m)、観音様とお地蔵様の徳を持っておられるのです。

  本堂の舞台から見た長谷寺の風景で、目につく大きな木は、仁王門から一直線に上に伸びる「登廊」が丁度直角に曲がる右側に目通り4m樹高約60mの巨木で、天狗杉と呼ばれるています。

  花の御寺といわれる長谷寺は、四季折々の花が境内をにぎわしています。特に牡丹が有名でGWの頃には、150種、7000株のたくさんの牡丹が咲き誇ります。

  土佐日記の紀貫之が長谷寺を参詣した際に読んだ和歌の記念碑が登廊の中と上の間にあります。

  「人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける」
 意味は、あなたは、さあね、昔のままの心なのでしょうか。わかりませんね。でも、昔なじみのこの里には、昔のままに梅の花の香りが匂っていますね。
  百人一首の35番に選ばれているこの歌は、紀貫之が何回もお参りをしていた長谷寺で、定宿としていた宿があったのですが、しばらく足が遠のいていたので、宿の主人が「昔どおりに宿はちゃんとありますのに。」と、無沙汰を遠まわしに責めたときに、貫之は、その宿に生えている梅の枝を折り、返した和歌なのだそうです。

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