天河神社「牛王宝印神符」


  1月17日は、天河大辨才天社で「牛王宝印神符頒布祭」(ごおうほういんしんぷはんぷさい)が行われました。前日の夜半より、正月三が日神前に奉った若水によって仕立てられた墨水で、牛王版木より牛王宝印札が刷られ、参拝に訪れた方へ牛王宝印札中央に朱印鮮やかに如意宝珠を押印し配られます。

  牛王神事は、1300年以上もの昔から、伊勢神宮、熊野の神社と共に我が国「三大牛王神事」としての伝統をもちます。これは、世界の国々が平和であり、諸国万民が安穏無事で、五穀万菜の実りが豊穣でありますようにと祈願するものです。
 参加者が宝印の押印の場に立会い、「神と人とが一体となる」神事を体験することができます。
  

  本来、『牛王』とは、牛の肝に含まれている霊薬のことですが、牛王宝印を略して『牛王』とも呼びます。 牛王宝印札の制度自体は、天河神社だけでなく、熊野・伊勢・京都八坂神社、高野山、東大寺、法隆寺等も有しておりました。
 このお札は厄除けの護符であり、また神仏に誓いを立てて、自分の行為・言説に偽りの旨を記す起請文の用紙にされました。

  熊野速玉大社の牛王宝印には、48羽の烏で文字が書かれていて、厄除けのお札としてだけでなく、裏面に誓約文を書いて誓約の相手に渡す誓紙としても使われてきました。牛玉宝印によって誓約するということは、神にかけて誓うということであり、もしその誓いを破るようなことがあれば、たちまち神罰を被るとされていました。
 

  熊野牛王符が起請文として使われた最古の記録は、奈良東大寺に残っていて、鎌倉時代中期の文永3(1266年)のもので、僧侶の間で紛争が起き、熊野牛王符に誓ってそれを解決したとあります。
 戦国時代になると、大名同士の誓約に牛王符が用いられるようになりました。豊臣秀吉は、臨終が近くなったとき、徳川家康をはじめとする五大老、五奉行に「熊野牛王符」に起請文を書かせ、ここに豊臣秀頼に対する忠誠を誓約させています。
 今でも、熊野本宮大社の神前結婚式では誓詞の裏に牛王符を貼ります。

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