浜田市と石見神楽


  島根県浜田市は、松阪の3代目城主であった古田重治が、江戸幕府の命により転封となり、新しく城を築き町を整備して初代浜田藩主になったところで、深いご縁がある町なのです。

  第12代浜田藩主松平康定は、国学を好み伊勢参りの際、松阪で本居宣長から「源氏物語」の講釈を受けました。この時お土産に渡した「駅鈴」は、隠岐島の玉若酢命神社にある国の重要文化財の「駅鈴」を模したもので、松阪駅前にモニュメントとして置かれくらい松阪で親しまれています。

  浜田といえば、石見神楽が盛んで、50以上もある社中が、30種類を超える演目を毎夜どこかで演じています。

  大阪万博での上演を機に石見神楽は全国に知られるようになり、海外公演も幾度も行われ、日本文化の交流にも一役買ってきました。「大蛇」を含めそのスケールの大きさとダイナミックな動きで絶賛を得ています。例祭への奉納はもとより、各種の祭事、祝事の場に欠かすことのできないものとなっており、広く誇れる郷土芸能です。

  石見神楽の起源は、定かではなく近世以前とされていますが、文化文政期の国学台頭とともに古事記・日本書紀を原拠とする神話ものが加わり、演目も豊富で極めて多彩です。

  もとは、神の御心を和ませるという神職によっての神事でしたが、明治政府から神職の演舞を禁止する達しが出たことにより、土地の人々の手に受け継がれ、民俗芸能として演舞されるようになったようです。そのリズムは、石見人の気性をそのままに、大太鼓、小太鼓、手拍子、笛を用いての囃子で演じられ、神話の世界に引き込まれていきます。

  浜田市の駅前のシンボルは、「どんちっち」神楽時計!。「どんちっち」とは、子どもたちがお囃子のリズムから「石見神楽」のことを「どんちっち」と呼ぶことにちなんだものからだそうです。

  朝8時から夜9時までの毎正時になると土台部から囃子手(はやして)が登場し、5分間お囃子を奏でている間に大蛇が霧を吐きながら暴れているのを須佐之男命が見事大蛇の首を討ち取るというものです。

  水産都市の浜田と農産の町、松阪のこれからも交流が続くことを願っております。


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