天河大辨才天社の能舞台


  お導きがないと辿り着けないといわれる、天河神社の社殿の中に、なんとも立派な能舞台があることに驚きます。7月の例大祭や春秋の大祭には能楽奉納や演奏がされます。

  弁財天は、水の神であるとともに、芸能の神でもありますので、天河神社では、悪霊を鎮めたり祖霊を祀ったりするのに、昔から田楽が奉納されてきました。そのため、弁財天八楽とか弥山八面とか呼ばれる楽舞が伝統的に伝えられてきたといいます。

  天河神社に能楽との関わりが生じたきっかけは、「花伝書」で知られる能楽の大成者・世阿弥の嫡男だった十郎元雅が、天河神社で能「唐船」を奉納し、阿古父尉(あこぶじょう)の能面を寄進したことによるそうです。

  その後、能楽関係者から能楽の奉納、能面や能装束の寄進が続いたので、能関係の貴重な資料や能面など多数保存されています。室町時代から桃山、江戸時代にかけての能面31面、能装束30点のほか小道具、能楽謡本など能楽関係の資料が多数あり、その中には世阿弥が使ったとされる面や豊臣秀吉が寄進した絢爛豪華な能装束もあります。


  「天河大弁財天略縁起」によれば、役行者が大峯山の一つ、山上ケ岳で国の平和を祈願したところ、まず最初に弁財天が、それから男性の神、蔵王権現が姿を現した。弁財天は女神であるため、荒々しい山上ケ岳の守護にふさわしくないと判断し、役行者は、水の神の山である弥山(みせん)にこれを祀った。弥山は天河神社が隣接する山である。このように役行者による弁財天の祭祀が、この神社の始まりであり、天河大弁財天社と称される由縁であります。

  天河神社は世界にいくつか点在する、神聖なエネルギーに満ちた場所の一つとしてみなされていて、古代より社殿には磐座(いわくら)がありますが、この磐座とは非常に神聖なものであり、神様が住まわれているところです。

  7世紀頃、修験道の祖である役行者は、長年にわたり天河を活動の拠点とし、吉野の大峯山に75靡の道場を開山しました。また空海(弘法大師)は、天河神社で修業を行った後、高野山で真言宗を開山するに至りました。この2人の偉人は、天河の神聖によって影響を受けたのでありましょう。

  天河社社家は、役行者のお供「前鬼・後鬼」の子孫と伝えられているため、節分は鬼を迎え入れる儀式となります。2月2日には「鬼の宿」、3日には「節分祭」が行われます。

  奈良県出身のアーティストである「KinKi Kids」の堂本剛さんは、昨年4月に発売したソロの『縁を結いて』(えにをゆいて)という曲では、天河神社に滞在中、歌詞の原型を書き、ミュージックビデオもここで撮影したのだそうです。彼も天河神社のパワーに魅力を感じているように、多くの人がここの神気を強く感じ自分を見つめ直す機会と前向きな力を得るようです。

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