松阪市には、江戸時代に活躍した多くの商人の旧宅があります。丹波屋の屋号で松阪木綿を中心に売り豪商になった、長谷川家の邸宅がほぼ完璧な状態で残っています。このフルセットで残っている長谷川邸を保存、活用しようと市民参加のオープン会議が行われました。
長谷川家は、三井家、小津家とともに松阪三大豪商といわれるまつさか発祥の偉大な商家です。その長谷川邸が松阪市へ寄贈(一部売却)の申し出があり、活用方法の検討がなされています。他の名家とは比較にならないほど、保存状態がよく、古文書が多く残されているのが最大の特徴です。
長谷川邸のある魚町界隈は、武者隠しの残る風情ある町並です。
小津家は、松阪市に寄贈された後、多額の修復費と歳月をかけ松阪商人の館として一般開放されています。江戸からの送金を保管していた万両箱が残されています。
三井家は、以前に解体され魚町別館といわれる「松阪木綿手織りセンター」と松阪市産業振興センターや銀行、民家などが立ち並んでいます。現在は、北側の門と井戸、五輪塔など一部が残っているという残念な状況で一般公開はされていません。現在に三井邸が全部を残っていれば文化財として貴重なものとなっていたことでしょう。
三井高利公が産湯をつかったという井戸は残っています。
長谷川邸の今後について、山中光茂市長は、「活用のあり方が明確にならない限り、寄贈を受けることは100%あり得ません」と述べ、活用法の明確化が先であると明言しました。
松阪市文化財保存委員会委員長の下村登良男氏は、「よくあるパターンは、建物がぼろぼろになって保存できなくなってから市民運動が起きるものですが、長谷川邸に関しては、きちんと整備して寄贈したとの意向えある」と、通常の事例との違いを強調されました。「市文化財としての価値は十分にあり、そののちに、県、国の文化財になるのがのぞまれる」との見解です。
茶室が3つあるので、茶会を開いたり、観光とスタディを行い商家の歴史を深く知ること、あるいはカフェやレストランにして人々が集まれる新しい名所にするなどの活用法が出されました。
長谷川家は、14代400年以上の歴史を持つ名家で、今も東京・日本橋にマルサン長谷川株式会社として存続されています。
本宅の主家中心部は、江戸中期の元禄時代の建造で、玄関から通り庭が奥へ続き、右側は、家族の居住空間、左側に江戸間という応接室などがあり、奥には土蔵が4棟並んでいます。
御屋敷のみならず、当時の商いの様子を伝える古文書が2万3千点ほど完全なかたちで保存されているという、全国でも一級品の遺産です。研究が進めば、松阪商人の繁栄を証明できる貴重な場所となるでしょう。
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