e-ちりめん優遊館・大藤

今年の松阪ちりめんお細工物の会は、この編みかごを使った巾着が作品展のテーマの一つになっていたのか、たくさんの作品が出品されていました。
なかでもこの薄いグリーンの松の柄の古いちりめんを使った作品は、少しオレンジのパンチも加わって、今の時期にはぴったりではないでしょうか。

実はオレンジとグリーンの組み合わせは、かなり強い印象を持つ作品になりがちですが、かなりしっとりした感じに出来上がっています。
たぶん同じ布から断ち合わせたもので、そのために余計に色の組み合わせがしっくりいっているのかもしれません。

この作品は古作から復元されたものと思われますが、シンプルな形の中に難しさが凝縮しているようにも思われてなりません。

特に背中の部分の丸みは、見るものにとっても美しさの象徴になっているのではないでしょうか。
そして松阪ちりめんお細工物の会教室では、初歩的なお稽古に位置づけられているものの、作品作りの基本的な部分が詰まっているということです。

ちりめん細工の蝶袋は古作の中でも、比較的たくさん見かけることができる作品です。
いかにも蝶という姿をしていますが、たぶん世界中を探しても真っ赤な蝶は見つからないと思います。

それでもこの作品、蝶の印象が強烈に伝わってきますので、現実離れした色柄で空想的作品を作るのも、ちりめん細工の大きな楽しみのひとつかもしれません。

この旅茶碗袋は言わば「ポータブル茶道具セット」と言うべきもので、本格的なお茶の世界でも旅茶碗袋を使う流派もあると言うことです。
今までにも二つの作品をご紹介していますが、実は中身まで披露するのは初めてのこと。
ちゃんとお茶碗、茶筅、茶杓まで揃っています。

この旅茶碗袋こそ日本の文化と遊び心が融合した、究極のオシャレグッズだと常々思っています。
特に桜の時期の野点などには、暖かい春の日の浮き浮きした気分をかもし出す、この桜の花びらの形をしたちりめん細工の旅茶碗袋は、もうピッタリの作品ではないでしょうか。